皆さんは、鳥さんに言うことを聞いてもらうために、ごほうびで釣っていたりしませんか?
あ、もちろんそのやり方が間違いというわけではありません。
これまでのブログでも鳥さんのトレーニングについて取り上げてきました。
その中で、言うことを聞いてくれた直後にごほうびをあげると、「あ、これをやるといいことが起こる」と鳥さんが理解して、その後もその行動をやってくれるようになるということをお話させてもらってきました。
ただ、どんなときも「ごほうびで釣ればいい」というわけではない、と私は思っています。
今回は、そんなお話をさせてもらおうと思います。
本題に行く前に、以前書きました「言うことを聞いてくれた直後にごほうびをあげることが大事」というお話をしている回のリンクを貼っておきます。
鳥さんに言うことを聞いてもらうための方法にご興味のある方は、こちらの回も併せて読んでみてください。
さて、今回のお話を進めていきましょう。
私は、鳥さんに言うことを聞いてもらうために、大きく2通りの方法があると思っています。
1つは、冒頭でお話したとおり、「言うことを聞いてくれたときにごほうびをあげる」という方法です。
もう1つはというと、「なんてことないということを教える」という方法です。
1つ目の「言うことを聞いてくれたときにごほうびをあげる」という方法は、鳥さんが『やろうと思えばできること』をやってくれたときに向いている方法だと思っています。
『やろうと思えばできること』というのは例えば、「おいで」、「あそこに行って」、「ターン」、「あくしゅ」、「バンザイ」といったものです。
『芸』と言い換えてもいいかもしれません。
そういったものを鳥さんがやってくれたときはごほうびをあげて、「その行動をするといいことが起こる」と鳥さんに学習してもらうと、その後鳥さんは言うことを聞いてくれやすくなると思います。
では、もう1つの「なんてことないということを教える」という方法ですが、これは鳥さんが『苦手なこと』をやってくれたときにやると良い方法だと私は思っています。
ヨウムの空ちゃんにハーネスを着けてもらうために、まずは身体に触わられることに慣れてもらおうと思いました。
そのときに私がやった方法は、身体をちょっと触ってすぐにやめるというものでした。
ちょっと触ってはすぐに触るのをやめ、またちょっと触ってはすぐに触るのをやめる。
翼を触ってすぐにやめ、今度は翼を掴んですぐにやめる。
そういったことをたくさん続けていくうちに、「なんだ、触られてもなんてことないな」と空ちゃんに学んでもらえた気がします。
今では身体を触っても嫌がらずにいてくれます。
オオハナインコの花ちゃんは人の手が苦手で、くちばしに触ることはもちろん、頭をカキカキすることなど到底できませんでした。
そこで私は、花ちゃんのくちばしをチョンっとタッチしてはやめ、またチョンっとタッチしてはやめということを繰り返しました。
最初のうち、花ちゃんは近づいてくる手にクワッと口を開けて威嚇したりしました。
でも、くちばしをちょっとタッチされるだけで他には何も起こらないので、花ちゃんも徐々に「なんだ、なんてことないじゃん」って思ってくれるようになりました。
そういったことを続けていくうちにくちばしにタッチされることが平気になり、さらにはくちばしをベタベタ触ることもできるようになりました。
今では頭をカキカキすることも、背中をベッタリ触ることも許してくれます。
そんな空ちゃんや花ちゃんの態度の変化を思い返しながら、「これって、人間も同じだよなぁ」って思うんです。
「ごほうびをあげるから歯医者に行って」
そう言われてごほうび目当てに歯医者に行ってみたものの、歯医者の治療がめちゃくちゃ痛かったらどうですか?
ごほうびがもらえると分かっていても、その歯医者に二度と行きたいと思いませんよね。
でも逆に、ごほうびがもらえなくても歯医者の治療が全然痛くなかったらどうですか?
「ここの歯医者なら通ってもいいな♪」って、自らすすんで行こうっていう気持ちになりますよね。
つまり、苦手なことの先にごほうびがあるかないかは重要なのではないと思うのです。
「なーんだ、なんてことないや」
そう思えること自体がごほうびになって、(苦手なことだけどやってもいいかな)って思ってくれるようになるんじゃないかなと思います。
人の手を怖いと思う鳥さんが手に乗ってくれたら、鳥さんが怖さを感じる前に安心できるところに帰してあげる。
鳥さんがキャリーに入っても閉じ込められず、自由に出入りができる。
そういった経験を通して、鳥さんが「なんだ、なんてことないじゃん♪」って思えるように仕向けていく。
そういったことを続けていくことで、鳥さんの苦手なことは少しずつ克服できるようになるんじゃないかなって思います。
「鳥さんが怖がってなかなか言うことを聞いてくれない」
そんなときは、ごほうびで釣るというよりも、「なーんだ、なんてことないや♪」って鳥さんが思えるように接してみてあげるのも手なんじゃないかなって思います。
※音声が出ますのでご注意ください