「君の願いをなんでも叶えてあげる」
あなたの前にそんなことを言う面識のない人が現れました。
あなたはどう思いますか?
何の警戒心もなく「嬉しい!」って思う人もいるかもしれませんが、大半の方は訝しげ(いぶかしげ)に思うんじゃないかと思います。
「ほら、おいでよ。君の行きたいところに連れてってあげる!」
その見知らぬ人はそう言いながらあなたに手を差し伸べてきています。
どうします?
その手を掴んでその人の言葉に乗りますか?
いや、なかなか怖いですよね。
「君の行きたいところ」と言ってはいますが、どこに連れて行かれるかもよく分かりませんし、連れて行った先で何をされるかも分かりません。
不安に思っているこちらのことはお構いなしに、相手は「さあ!さあ!」と手をグイグイとこちらに近づけてきます。
どうしようかと困っていると、もう一人、別の面識のない人が現れました。
「君の願いをなんでも叶えてあげる」
新しく現れた人も、先ほどの人と同じことを言いながら手を差し伸べながらこう続けます。
「ほら、おいでよ。君の行きたいところに連れってってあげる」
ここまで、最初に現れた人とまったく同じ言動です。
でも、このあとの態度が最初の人とは違っていました。
こちらが不安そうにしていると、
「怖いんだね。じゃあ、来なくていいよ」
と言って、差し出していた手を引っ込めたのです。
さあ、どうですか?
あなたはこのシーンを想像して、どう思いました?
2人の面識のない人からされていたことは、どちらも変わらず「おいで」と手を差し伸べられることでした。
しかしその後の展開に違いがありましたよね。
最初に現れた人……分かりやすくするためにこの人を「一雄」としましょう……一雄はその後も変わらず「おいで」と言いながらグイグイ手を近づけ続けました。
もう1人……この人は「二郎」とします……二郎は「じゃあ来なくていいよ」と手を引っ込めました。
あなたは、一雄と二郎、どちらの人の方が信用できますか?
多くの人は、「二郎の方が信用できそう」って思うんじゃないかと思います。
「強制的な感じがなかったから」
「こっちの気持ちを考えてくれてそうだったから」
といったあたりがそう思う理由なんじゃないでしょうか。
…って、このお話、そのまま人と鳥さんに置き換えることができるんじゃないかって思っています。
鳥さんの関係を良くするためには、「信頼関係」を築くことが大事だと思っています。
信頼関係を築くためには、当たり前のことですが、「この人は信用できる」という経験を何度もしてもらうことが大事です。
そして、「この人は信用できる」という経験をしてもらうためには、「相手の気持ちを尊重して、相手の要望に応える」ことが大事だと思います。
例えば、鳥さんにパーチにとまってほしくて、「ここ(パーチ)に行って?」と促したときに、鳥さんがスッと素直にパーチに移ってくれないときってありますよね。
そういったとき、無理やりパーチに移ってもらうのではなく、「あ、今はパーチに行きたくないのね、わかったよ」と、パーチに行ってもらうことをやめるのがいいんじゃないかと思うんです。
別の例として、パーチでくつろいでいる鳥さんに手に乗ってほしくて、「おいで?」と言ったとします。
でもその鳥さんは手に乗る気分ではなく、全然手に来てくれなかったとします。
そういったときも、グイグイ手を出して乗ることを強要させるのではなく、「あ、今はひとりでくつろいでいたいのね」と、手に来てもらうことを諦めるのがいいんじゃないかと思います。
他にも、手に乗ってもらいたいけど鳥さんが肩に乗りたがっているときは、素直に肩に乗らせてあげる。
ペレットよりシードを食べたそうにしているのであればシードを与えてあげる。
鳥さんにおもちゃを買ってあげたけど、気に入らないようであれば撤去してあげる。
「ここで遊んだら?」と人が行き先を決めるのではなく、鳥さんが遊びたい場所に連れて行ってあげる。
イタズラしたそうにしているのであればイタズラさせてあげる(※そのためにイタズラしてOKなエリアを用意することが大事)。
こんな感じで、自分の要望を鳥さんに押し付けるのではなく、あくまでも鳥さんの気持ちを尊重して接することで、鳥さんとの信頼関係は築けるんじゃないかって思うんです。
鳥さんの要望に応えるというのは、ときに人の側からすれば、「鳥さんが思い通りになってくれない!困る!」という事態になります。
あと5分で家を出ないと会社に遅刻するっていうのに鳥さんがなかなかケージに帰ってくれなくて困る…なんていう経験はどなたにもあるんじゃないでしょうか。
なので、どんなときも鳥さんの要望に付き合うというのは難しいと思います。
でも、例えば放鳥しているときに「手に乗る?」と言って、鳥さんが乗りたがらなければスッとすぐに諦めてみる。
そういった小さな機会をたくさん繰り返すことで、鳥さんが「わたしの願いを叶えてくれる。嬉しいなぁ」と思う瞬間はどんどん増えていくと思います。
そういった経験を重ねることで、鳥さんの中の「この人は信用できる」「この人となら仲良くできる」という気持ちが強くなっていってくれるんじゃないかと思うんです。
信頼関係ができて仲良くなれば、多少強引に人の要望を押し付けても、「うーん、今はちょっと気分が乗らないけど、でもまぁ、この人のこと好きだし、いつもよくしてもらってるから、今回は付き合ってやるかぁ」と、鳥さんが人の要望を聞き入れてくれるようになることもあったりなかったりするんじゃないのかなぁなんて思ったりしなくもありません(←だんだん小声)。
自分の要望を一方的に押し付ける一雄ではなく、相手の気持ちを尊重する二郎のような立ち振る舞いを意識すること。
「いつも心に二郎さん!」
そんな合言葉を胸に、鳥さんとの信頼関係構築を目指しましょう。
※音声が出ますのでご注意ください。