私は長い間、犬君と一緒に暮らしてきました。
今もミニチュアダックスの”そらた”と一緒に生活しています。
犬君と一緒に暮らしたり犬君にいろいろなコマンドを教える中で、感じてきたことがあります。
それは、「人と犬君の関係は”主従関係”だ」ということです。
人と犬君は代々、協力し合って生きてきました。
人は狩猟をして獲物を捕らえて生きながらえてきました。
そんな中、人より早く走ることができ、嗅覚、聴覚も優れている犬君は、狩猟をするパートナーとしてとても頼もしい存在でした。
時代が発展して牧畜を行うようになったときも、犬君は牧羊犬として人の役に立つ存在であり続けます。
犬君側の視点から見ても、人と一緒に暮らすことで、安定的に食べ物にありつけたり外敵から身を守ってもらえました。
人と犬君は一緒に暮らすことでお互いにメリットがあったわけです。
加えて、犬君の祖先である狼は、社会的な群れを作って生きてきました。
群れの中には上下関係があり、特に飼育下の狼に関しては階級意識というものが強く見られます。
その名残は今でも犬君に脈々と受け継がれているんだと思います。
少し話は飛びますが、私はこれまで犬君にしつけやコマンドのトレーニングをしてきました。
そのときの基本的な姿勢は「私の指示は絶対」というものでした。
なぜなら、人が出した指示を聞かないことを続けると、人との関係性が壊れてしまうからです。
例えば、私が「おすわり」と言って、犬君がおすわりをしなかったとき、それでヨシとしてしまうと犬君は「なんだ、この人の言うことって別に聞かなくてもいいんだ」と思うようになります。
それが繰り返されると、どんどん人の言うことを聞かなくなります。
さらにエスカレートすると、「こいつの言うことなんて聞く必要ない」という認識になります。
そこから「人と犬君の上下関係の逆転」に繋がります。
そうならないようにするために、「出した指示は基本必ずやらせる」ということが鉄則でした。
(どうしてもできない場合は、難易度を下げて必ずできることをやらせるなど、必ず何らかのコマンドをやらせて成功させて終わるということやってきました。)
そういった経験から、犬君との関係においては、「どちらが上」ということをハッキリと理解させるというのがとても大事だと思っています。
このように、人と協力し合って生きる中で、犬君にとって人と一緒にいることは自然なものになりました。
加えて、犬君の持つ上下関係を大事にする生態を活かして、人と犬君は「主従関係」を築くことでいい関係が保てると、私は思っています。
では、人と鳥さんの関係はどうでしょう。
私は、「人と鳥さんとの関係は”信頼関係”」だと思っています。
鳥さんが生活をする上で、人と接する必要はなかったんです。
鳥さんにとって人と一緒にいるメリットはなく、また人にとっても鳥さんと一緒にいるメリットは「可愛い」「癒される」くらいで、犬君のような働きは鳥さんには求められなかったわけです。
人と鳥さんは一緒に生活をしてこなかった、つまり、鳥さんは人の存在に不慣れなのです。
鳥さんからしたら「人という生き物がわたしたちに何をするか分からない」と思っているかもしれません。
何されるか分からない相手に近寄るはずありませんよね。
自分の命が危険にさらされるかもしれないわけですから。
また、鳥さんは狼と同様群れを作って生活をする生き物ですが、その群れの中に上下関係はありません。
あるのは、縦の繋がりではなく横の繋がりです。
鳥さんに「このひとのために役に立ちたい」「このひとに仕えよう」なんていう意識はありません。
命令されたからといって従うこともありません。
群れの中の鳥さんは、「会社の上司と部下の関係」ではなく「友達同士の関係」ってイメージでしょうか。
誰かが「これをやれ!」と命令を出して他がそれに従うのではなく、個々が「オレはこうするよ? 君はどうする?」って言っている感じ。
群れとは言え、規制もしがらみもなく、個々の判断で自由に過ごす感じ。
そんな感じかなって思います。
そんな鳥さんと仲良くなるために、先ほどもお話した通り、私は「信頼関係」が大事なんだと思っています。
先ほどもお話した通り、鳥さんは人に慣れていない生き物です。
鳥さんは犬君のように「手に乗れ!」と命令して聞くような生態でもありません。
無理やり命令するようなことをしたら鳥さんはびっくりして逃げてしまいますし、「この人、怖い」って思われて近寄ってきてもくれなくなります。
でも逆に言えば、「この人は大丈夫」と思ってもらうことで鳥さんは近づいてきてくれます。
鳥さんとの距離を縮めるためには、この「この人は大丈夫」って思ってもらうことがとても重要だと思うのです。
「この人は大丈夫」という気持ちって、言い換えれば「この人のことは信用できる」ってことですよね。
つまり、鳥さんから信頼感をどれだけ得られるか、いかに鳥さんとの信頼関係を築けるかが、鳥さんと仲良くなるための鍵だと思っています。
もう一点、大事なことがあります。
信頼関係というのは鳥さんから人に対するものだけではありません。
人から鳥さんに対する信頼関係も大事です。
「噛まれるかも…」とオドオドしているうちは、本当の信頼関係は築けないんじゃないかと思います。
「私はあなたのことを信じているよ」と、人から鳥さんのことを信じることも大事なんじゃないかなと思うんです。
鳥さんが飼い主さんに「この人は嫌なことしない」と、飼い主さんが鳥さんに「この子は嫌なことしない」と双方が信頼し合うことで、本当の信頼関係が生まれる。
そこから人と鳥さんの仲の良い関係が築かれていくんだ。
うちの鳥共と一緒に暮らしながら、そんな風に思うのです。
※音声が出ますのでご注意ください