先日、コロナにやられてベッドでゴロゴロしているときに、たまたまスマホに流れてきた動画がありました。
それは故ムツゴロウさんがどうにも人に懐かない犬君と対面したときの動画でした。
その犬君は誰にも懐かず、人を見ては吠えて威嚇するような子で、飼い主ですら顔をしかめるほどでした。
そんな犬君にムツゴロウさんはいつものように「よーしよしよし」と言いながら近づいていきます。
ワンワン吠えて威嚇を続ける犬君の気持ちを探りつつ、ムツゴロウさんはゆっくり手を出します。
少し噛まれたりするのですが、それには臆することなく犬君と接し続けます。
そして最終的にはその犬君を完全に懐かせてしまうのでした。
その動画がどんなものか、ここで動画の一部を貼り付けたり、その動画へのリンクを用意したりすれば分かりやすいと思うのですが、多分権利の関係などでそういったことが難しいと思います。
その動画を観てみたい方は、Youtubeで「ムツゴロウ 猛犬服従」で検索をしてみてください。
きっと今回お話した動画が出てきますので、そちらを観ていただけるとより分かりやすいんじゃないかと思います。
さて、その動画の中でムツゴロウさんが何度も口にするフレーズがあります。
それは「上下関係」に関する言い回しです。
「相手を噛むことで順位付けが起こるんですね」
「(ムツゴロウさんが)噛まれることに耐えると(犬君が)私の下位に来るんです」
「耳が少し後ろに倒れる感じになる。それは(犬君が)私の下位についた印なんです」
「相手を舐めるという行動は、敗者がやる行動なんです」
「今舐めましたね。はい、これで(この犬君は)私の下位についたわけです」
「『あなたの下につきましたよ』という表情で遊びの噛みをしてくるんですね」
「腹ばいになるのは服従している証拠なんですね」
「(犬君が)しっかり服従しているので頭を撫でてあげます」
ムツゴロウさんのおっしゃる通り、犬君との関係性構築に重要なのは上下関係なんです。
犬君の場合、「オレの方が上」「お前はオレよりも下」といった感じで、どっちが偉いかが常に問題になってきます。
そして、下の立場の者が上の者に従うのです。
ムツゴロウさんはそういった犬君の習性を理解して、自分が上位になるように実践し、3分ちょっとという短い時間で犬君と仲良くなっていったわけです。
鳥さんもこんな感じで簡単に懐いてくれたらいいのになぁ…って思いますよね。
でも、いくらムツゴロウさんでも、鳥さん相手にはそうはいかないと思うんです。
というのも、鳥さんとの関係性構築において重要なのは、「上下関係」ではなく「信頼関係」だと思うからです。
犬君のように「噛まれたことに耐えたから強い」とか「強いやつ=自分より立場が上」といった考えは鳥さんにはないと思っています。
野生の鳥さんを見てもそうですよね。
確かに縄張り争いなどで戦っている鳥さんを見かけることはあります。
でも、その争いに負けたからといって敗者が勝者に従うことはないですよね。
鳥さんの争いは、上下関係を決めるためのものではなく、ただ「嫌なことを排除するための手段」といった感じです。
インコさんが噛むのもそうですよね。
インコさんが噛むときって、「嫌だ!」とか「やめて!」とか「相手してよ!」とか、インコさんが何らか意思表示をしたいときだと思います。
「わたしの方がえらいんだぞ!」「服従しろ!」と鳥さんがアピールするために噛んでるわけではないと思うんです。
そんな「上下関係」という意識がない鳥さんと良い関係性を築くために重要なのは「信頼関係」だと私は思っています。
「この人の言うことをきいていたらいいことがあった」
「この人は基本的に嫌なことはしない」
「この人はわたしにいいことをしてくれる」
鳥さんがそういったことを何度も何度も繰り返し体験するうちに信頼関係が芽生えてくるんだと思います。
その結果、鳥さんが言うことをきいてくれたり、鳥さんが懐いてくれたりするようになるんだと思うんです。
ただ、信頼関係って作るのに時間がかかるんですよね。
人間もそうですよね。
「この人は信用できる」と思えるようになるまでには、何度も「この人は信用できる」と思える経験を繰り返す必要があります。
何度もそういった経験を繰り返すためには、どうしても時間がかかってしまうんです。
一方で、上下関係は時間を必要としないんです。
「この人が師だ」となれば、その瞬間からその人に従うしかないわけです。
ムツゴロウさんと犬君が3分ちょっとの時間で仲良くなれたのも、上下関係による関係性だからだと思っています。
上下関係で関係性を作る犬君と比べ、鳥さんは信頼関係で関係性を構築するため、懐くまでに時間がかかる。
鳥さんが簡単に懐かない理由はこういったことなんだと思います。
でも、そう考えると、懐くまでに時間がかかる鳥さんが、懐いてくれている状況ってすごいことだと個人的に思います。
鳥さんが懐いてくれているということは、それだけ鳥さんからの十分な信頼を得ているということです。
その関係性は、他の人が簡単に真似することも奪うこともできない、飼い主さんと鳥さんとの間だけに存在する本当にかけがえのないものだと思います。
すでに鳥さんと仲良くできている方。
たまに噛まれてしまったり言うことを聞いてくれなくなるときもあるかもしれません。
でも、あなたと愛鳥さんの関係性は本当に素晴らしいものだと思います。
これからも自信を持って鳥さんとの時間を楽しんでいってもらいたいなって思います。
そして、まだ鳥さんと仲良くできていない方。
焦る必要なんかありません。
鳥さんといい関係を作るためにはどうしても時間がかかってしまうものなんです。
無理せずゆっくり、でも諦めずに鳥さんと時間を共有してください。
そうすることで着実に鳥さんとの関係性は深まっていきますから。
※音声が出ますのでご注意ください