前回のブログで、『ゼルダの伝説』のプレイ動画から、クリッカートレーニングの仕組みをお話させてもらいました。
「なぜカチカチ鳴らしているだけでトレーニングできるのか」については前回のお話からご理解いただけたかなと思っています。
でも、「いやいや、口で言うのは簡単だけど、カチカチやるだけでそんなにトレーニングってできるものなの?」と思われる方もたくさんいらっしゃると思います。
そこで今回は、オオハナインコの花ちゃんに協力してもらって、実際にクリッカートレーニングしている様子をみていただこうと思います。
その様子から、クリッカートレーニングの基本的なやり方をお伝えできたらと思っております。
クリッカートレーニングの仕組みを解説している前回のブログのリンクを以下に貼っておきます。
まだ読んでいなくて内容が気になる方、もう一度復習したい方は、読んでみてくださいね。
では、本当の本当の最初、鳥さんが「クリッカー」というものを知らない状況のところからお話しましょう。
鳥さんが「クリッカー」というものを知らないときにまずやるべきことは、クリッカーを「カチッ」とさりげなく鳴らすことです。
鳥さんの中には、この「カチッ」っていう音を「怖い」と思う子もいます。
「カチッ」という音を怖がっている状態だとクリッカーを使ってのトレーニングはうまく進みません。
なので、まずは「カチッ」っていう音に慣れさせてあげてほしいのです。
鳥さんの近くで鳴らすのではなく、遠くから本当にさりげなく「カチッ」と鳴らしてください。
鳥さんに「ほら、鳴らすよ」と言って鳴らすのではなく、例えば、テレビを見ながらとか、料理を作っている途中とか、そういった普通に生活をしているときに「カチッ」と1回だけ鳴らしてください。
そして、鳴らした後、見ないふりをしながら鳥さんの様子を見てあげてください。
もし遠くから「カチッ」ってやってもビビってしまうようでしたら、クリッカーにハンカチやタオルを巻くなどして、音を小さくする工夫をしてあげてください。
「カチッ」と鳴ったときに、最初のうちは「ん? なんだ??」とキョロキョロするかもしれません。
でも、さりげなく鳴らすということを繰り返しているうちに、なんの反応もしなくなると思います。
それでOKです。
まずは「カチッっていう音が鳴ってもなんてことないんだ」ということを教えてあげてください。
「カチッ」という音を聞いても鳥さんが怖がらない状態になったら、「カチッ」と鳴らしたらすぐにごほうびをあげるという遊びをやってください。
この遊びを繰り返して、鳥さんに「カチッって鳴るといいことが起こる」ということを理解してもらいたいのです。
ごほうびは鳥さんの大好きなおやつとかがいいです。
最初のうちは鳥さんもわけがわからないと思うので、なかなか思うように付き合ってくれないかもしれません。
やっているうちに集中力が落ちてきて、まわりをキョロキョロしたりウロウロと他の方に行きたそうにすることもあると思います。
そういうときは鳥さんに無理強いさせず、「カチッ」→「ごほうび」の遊びをやめちゃってください。
本当にゆっくり、少しずつ少しずつ、飼い主さんの「やってみようかな」と思った気まぐれなタイミングで構いません。
「1日に数回でもできればOK♪」くらいの気持ちで「カチッ」→「ごほうび」を繰り返してあげてください。
さあ、ここまで大丈夫ですか?
「クリッカートレーニング」と言いつつも、ここまで「トレーニング」らしいことはほとんどありませんよね。
たださりげなく「カチッ」と鳴らすだけとか、ごほうびをあげる前に「カチッ」と鳴らすだけとか、それくらいです。
でもこれがクリッカートレーニングの本当のベースなので、ゆっくりたっぷり時間をかけてやってみてください。
具体的な期間で言えば、「カチッ」っていう音に慣れてもらうだけでも数日、「カチッ」→「ごほうび」の遊びに数週間くらいかけて全然OKです。
焦ることはありません。
「カチッ」っていう音は怖くないし、それどころか「カチッて鳴るといいことが起こる」ということを、ゆっくり時間をかけてちゃんと理解してもらってください。
「カチッてなるといいことが起こる」ということを鳥さんが理解してくれたところで、本格的にクリッカートレーニングを始めていきます。
今回は「指し棒の先にタッチする」ということをオオハナインコの花ちゃんに教えてみたいと思います。
さあ、ここで重要になってくる考えが、前回のブログでもお見せした『ゼルダの伝説』のプレイ動画にあります。
最終的なゴールは「コログのミ」がもらえることです。
で、その最終的なゴールに導くために、「変わった花」の存在があります。
1つ目の「変わった花」を触ると、2つ目の「変わった花」が現れます。
2つ目の「変わった花」に触れると、3つ目の「変わった花」が出てきます。
それを繰り返していくうちに、最終的なゴールにたどり着く…といった感じのプレイ動画でした。
クリッカートレーニングもそれと同じです。
最終的なゴールは「指し棒の先にタッチする」ということです。
その最終的なゴールに導くために、「カチッ」という音があります。
花ちゃんが指し棒を見たときに「カチッ」と鳴ります。
花ちゃんが指し棒の方にちょっとでも近づいたときに「カチッ」と鳴ります。
花ちゃんが指し棒の方に向かって足を踏み出したときに「カチッ」と鳴ります。
それを繰り返していくうちに、花ちゃんが「指し棒の先にタッチする」という最終的なゴールにたどり着く。
ね、同じですよね。
いきなりゴールには行けないんです。
ゴールに近づくために、小さなハードルを1つずつ超えていくような形で徐々に近づいていくんです。
徐々にゴールに近づいていくときに、「ヒント」と言いますか、「その行動で合ってるよ」「それをやっていると何かあるよ」という『わかりやすい暗示』の存在が大事なんです。
『ゼルダ』の場合の『わかりやすい暗示』って、「触ったらその花が消えて、別のところに現れる」という演出です。
その演出を見て、人間がもともと持っている好奇心が刺激されたり、特にゼルダなどのゲームをやられている人はこれまでの経験から、「何かありそう」と自然に感じるんですよね。
そうしてプレイヤーは、任天堂が用意した『わかりやすい暗示』によって、任天堂が想定した動きをまんまとしてしまうわけです。
では、鳥さんの場合はどうか。
任天堂がプレイヤーを意のままに操るために「変わった花」の演出を用意したのと同じように、飼い主さんが鳥さんを意のままに操るために用意してきた『わかりやすい暗示』がありますよね。
そうです、クリッカーの「カチッ」という音です。
本格的なクリッカーを使ったトレーニングを始める前に、「カチッて鳴るといいことが起こる」ということを時間をかけて理解してもらったのは、このためです。
「カチッ」と鳴ったら「ごほうび」がもらえるということを繰り返し経験した鳥さんは、「カチッ」と鳴ったときに「お、何かあるかも」と自然に思うようになります。
その「お、何かあるかも」という気持ちが、「この行動をやったらごほうびもらえるかも」「もう一回この行動をやってみよう!」というやる気に繋がるのです。
こういった鳥さんの心理を利用してゴールまで導いてあげる。
これがクリッカートレーニングです。
一番下にある動画の後半で、実際に「指し棒の先にタッチする」ということを花ちゃんに教えている様子がご覧になれます。
この動画で注目すべき点は、花ちゃんが「指し棒の先にタッチする」というゴールに近づく行動をしたときに「カチッ」と鳴らしているところです。
指し棒を「見た」ときに「カチッ」。
指し棒の方に「ちょっと体重を移動した」ときに「カチッ」。
指し棒の方に「一歩踏み出そうとした」ときに「カチッ」。
こんな感じでちょっとでもゴールに近づく行動をしたときに「カチッ」と鳴らしてあげます。
まさに「カチッ」という音でゴールに導いてあげる感じです。
こういった経験を繰り返すことで、最終的には「あ、指し棒の先にタッチすればいいんだ」と気づいてくれます。
鳥さんは正解に気付くと、自信を持ってその行動をするようになります。
その証拠に、理解してからの花ちゃんの行動のスピードは最初の頃と全然違いますよね。
指し棒が現れた瞬間に「あ、触ったろ♪」と動き出しています。
トレーニングをしながらこういう花ちゃんのイキイキとした表情や態度を見ると、改めて思うことがあります。
それは、トレーニングって何もおもしろい芸をしたり、みんなに見てもらって「すごい!」と言わせるばかりが目的じゃないということです。
指し棒が出されたときに、「あ、触ったろ♪」って思って自信を持って触りに行く。
その結果、予想通り「ごほうび」がもらえる。
そういった「わたし、やったった♪」という達成感。
頑張った結果、ごほうびがもらえたという嬉しい体験。
そして、大好きな飼い主さんとの楽しい時間の共有。
こういったことを気軽に繰り返し味わえることが、トレーニングすることの良さだと思っています。
冒頭でもお話しましたが、トレーニングと聞くと、つい専門的なイメージだったり「素人にはムリ」といった印象を抱かれるかもしれません。
でも、難しい動作や芸をすることだけがトレーニングではないんです。
本当にめちゃくちゃ単純な動作(ゴール)であっても、飼い主さんと鳥さんとの間で楽しめればそれでいいんです。
クリッカートレーニングのやり方や仕組みのこと、ご理解いただけましたでしょうか。
ちょっとでも理解が深まって、「私もやってみようかな」なんて思ってもらえたら嬉しいです。
「オレ、やったった♪」という達成感を味わいながら、飼い主さんとの関係性もどんどん構築される。
そんな機会をみなさんもぜひ持ってみてください。
※音声が出ますのでご注意ください。